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三上延 著 メディアワークス文庫【ビブリア古書堂の事件手帖 〜扉子と不思議な客人たち〜】 感想・レビュー
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ビブリア古書堂の事件手帖 〜扉子と不思議な客人たち〜【概要・あらすじ】
あの壮絶な、シェイクスピアの稀覯本をめぐる争奪戦から7年。
ビブリア古書堂は変わらずに、鎌倉にひっそりと佇んでいた。
変わったのは、「栞子」と「大輔」は結婚して、2人で店を続けている事。
そして、今はもう1人、栞子と大輔の娘「扉子」がいた。
見た目は、眼鏡をかけていない事と年齢が違う事を除けば、栞子にそっくりな扉子。
そして、栞子は扉子に語り聞かせる。
それぞれの古書から紐解かれる、不思議な客人達の話。
古い本に詰まっている、絆と秘密の物語。
人から人へと受け継がれる本の記憶を。
4話からなる、連作短編集。
ビブリア古書堂シリーズの第二章が始まる。
ビブリア古書堂の事件手帖 〜扉子と不思議な客人たち〜各話【感想・レビュー】
プロローグ
概要でも書いたが、前作から7年経っている設定。
しかし、これから始まる短編3話は、それ以前の話。
つまり、栞子が扉子に、昔話の様に、その古書にまつわる客人や解決した依頼の話していく。
母の智恵子と栞子が似ていると同様に、娘の扉子も栞子とそっくりという設定も面白い。
違うのは、人見知りの栞子に対して、扉子は表情豊かで、受け答えもはきはきしている。
ただ、古書ばかり読んでいるらしく、同年代の友達がいないのが心配らしい。
そして、大輔と栞子が、智恵子の洋古書の売買の手伝いをしている事にもびっくり。
和解とまでは行っていない様子だが、前作、智恵子に誘われた時、自身達の勉強の為に必要かもしれないと言っていたのを覚えている。
作者のあとがきで、第一章と言われる、全7巻の中で出て来た、登場人物の後日譚という事で、ビブリアシリーズを深掘りしたい人にはおすすめの番外編となる。
第一話 北原白秋『からたちの花 北原白秋童謡集』
前シリーズに何度も登場した、坂口夫妻の後日譚。
ここでは、坂口昌志の姪にあたる、「平尾由紀子」が語り手。
昌志と平尾家が、30年間絶縁する事になったきっかけ。
そして、幼かった由紀子が昌志を怖がる事になった出来事の本当の理由。
その30年間の誤解を解く、きっかけになったのは1冊の古書だった。
この話にはビブリア古書堂の2人はほとんど出て来ない。
由紀子が父親に頼まれて古書を買いに、ビブリア古書堂により、そこで栞子と会話をする。
その古書にまつわる話をする栞子から、少し、背中を押される形になったかもしれない。
そして、昌志と由紀子との秘密が明らかになった時、新たな絆が生まれた、感動する物語。
第二話 『俺と母さんの思い出の本』
この昔話は、大輔と栞子が結婚して2ヶ月の時に受けた依頼。
母、智恵子からの経緯で「どこにあるか分からない本を探して欲しい」という依頼だった。
それは、亡くなった息子さんの思い出の本で、タイトルも出版社も分からない、解っている事は、ゲーム関連の本という事だけだった。
自分でも知っている、ゲーム雑誌が出てきたが、ゲームの本まで精通している栞子に驚いた。
この話では、様々な人達の、偏見でおきた、確執や嫉妬が解決を難しくしていた。
母と息子、嫁と姑、そして友人・・・・
この難しい依頼も、栞子の咄嗟の機転で解決に導く。
そして、それぞれの思い違いを、新たな絆にしてくれたのも1冊の古書だった。
第三話 佐々木丸美『雪の断章』
この話では、栞子も大輔も出てこない。
ここでは、前シリーズにも登場した人達、高校生だった頃の「小菅奈緒」と本のせどりしていたホームレスの「志田」の後日譚。
小菅奈緒の親友でもあり、栞子の妹の「文香」も登場する。
小菅は、1冊の古書を残して、突然居なくなった志田を探してた。
そこで、「今野裕太」という男子高校生の出会いが、さらに困惑する事になる。
志田が居なくなり、小菅が探している話は前シリーズでも触れられていた。
そこのスピンオフ的な話になっているので、この場面からあそこに繋がっていたのかとなるので、手元にシリーズがある方は読み返したくなるエピソードだと思う。
第四話 内田百閒『王様の背中』
四話だけ半年前の話で、扉子も関係している物語になっている。
自分の中では記憶に新しい、前シリーズ最終巻に登場した、「吉原喜市」
7年前、シェイクスピアの稀覯本を巡る争奪戦に敗れ、現在では病気の所為もあり、完全に塞ぎ込んでいる様だった。
現在、仕事の後を継いでいる、息子の「吉原孝二」とビブリア古書堂との物語。
この話も、長く見れば、吉原家の後日譚という事になる。
栞子は、当事者の1人であった扉子に詳しい話をする事で、1冊の本を巡る物語が、必ず楽しい物、絆を生む物ばかりではなく、関わった誰かが不幸になる事も教えたかった。
結末は少し寂しく、悲しくなっている話を、6歳の扉子がどう感じているだろうか。
エピローグ
他人に関心が薄い扉子は、本好きな人全てが善人だと思っている。
それは、危うい事だと身をもって知っている栞子だが、他人への関心を閉ざすよりはいいと考えている。
今後、扉子がどう成長していくか書かれるかわからないが、楽しみに待っていたい。
そして、この昔話的に話してる合間に起きているのが、大輔が落とした「青いカバー」の文庫本を栞子が探す事だった。
勘が鋭い扉子に、探し物をしている事がバレて、一緒に探す事になったが、扉子には見られたくない本なので先に見つけなければならない。
その文庫本は大輔が、前シリーズにおきた依頼や古書にまつわる事件の顛末、そして栞子との恥ずかしいエピソードまで書き綴られてある日記の様な物。
正しくこれが『ビブリア古書堂の事件手帖』という事になる。
まさか、番外編的な第二章で、タイトルの伏線回収とは驚かされた。
最後に、大輔と栞子が、7年経った現在でもラブラブなので、こういうのいいなあと思い嬉しかった。
続編2作目、ビブリア古書堂の事件手帖Ⅱ~扉子と空白の時~も出ているので、続けて読みたいと思う。
メタトロン
よみかつぶろぐ的総評
ビブリア古書堂の事件手帖Ⅱ~扉子と空白の時~
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