友浦乙歌 著 文芸社【雨の庭】感想・レビュー

友浦乙歌さんとは

友浦乙歌さんプロフィール

愛知県立旭野高等学校在籍中、小説家になることを志し、愛知淑徳大学文化創造学部にて小説を書くことについて学ぶ。
同人・発信活動を通し、多くの支援を受け一作目『四次元の箱庭』を出版。
ひらく本屋東文堂本店にて発売イベントを開催するなど精力的に活動中。

友浦王国

公式サイト【友浦王国】

雨の庭【あらすじ】

「ここには、怖いものは、何もないよ････」

そう、ここは楽園だった。

通信サイト『天蔵(アマゾウ』

必要な物はそこで手に入る。

食品、生活用品、家電、最新ゲーム機、そして家までも売っていた。

しかも、それら全てが無料、0円。

仕事も学校も試験もない。

人々は毎日、時間もお金も心配せず楽しく過ごせる世界。

そんな世界に「末松律歌」はいた。

律歌はこの世界に来た時の記憶がなかった。

ただ、何かを始めなければ、という思いだけが残っている。

その思いは、この世界への疑問と好奇心へと変ってく。

彼女を助けてくれた「北寺」の協力により、この世界のすべての場所を探索する事に。

踏み入れてはいけない領域に辿りついた時、次第に明らかになっていく真実。

その時、律歌の記憶が蘇る････

感動のラストが待っている、ミステリックSF冒険ファンタジー。

雨の庭【感想・レビュー】

通信サイト 天蔵 (アマゾウ)

自分が本を読む時に時々やるのが、あらすじも概要も見ないで読み始める事。

素敵なご縁に恵まれて本作を読む事が出来たが、ミステリを好んで読んでいる自分にライトノベルの良さが理解出来るかなと、書影だけ見て読み進め始める。

ところが、この『天蔵(アマゾウ)』という、謎の特殊な設定の世界に引き込まれる。

え！？これミステリじゃん！と思ったら、ページを捲るのが止まらなくなった。

自転車はあるけど、自動車やバイクなど、遠くに行くための乗り物は買えない。

野菜や果物は育てられるが、生き物は買えない。

と、何でもあると言っても、ある程度の規制がある所も考察したくなり、面白くしている所かもしれない。

そして、不思議な世界の真実に近づいた時、律歌と北寺のとった決断が中盤から終盤に繋がって行く。

末松律歌と北寺智春

北寺は、初めからこの世界の事を知っているようだった。

それでも、律歌の好奇心の手伝いをする事もあれば、何もせずこの世界にいようと懇願する場面もあったりと、チグハグな言動をする。

それは、何か気にしての行動だった事がわかるのは終盤になってからだが、本当に律歌の事が好きで心配している様子はグッとくるものがあった。

律歌も北寺の事は信頼しているが、やはりこの世界の解明が優先してしまうので、北寺の気持ちに応えられない所もあり、この2人の関係も見どころ１つかもしれない。

雨の庭【まとめ】

現代の労働に関する啓示の様な社会派的な所もあったり、学生時代の青春の描写もあったりと、幅広い年代で楽しめる作品だと思う。

読後のじんわりとした感動と登場人物達の決意が見えるラストにも注目。

実はもう1人重要な人物がいるが、あまり多くを書くとネタバレになってしまうので、是非、手に取って読んで欲しい作品です。

友浦乙歌さんは、まだまだこれからの作家さんだと思うので、ずっと作品を追って行きたいと思う。

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