斜線堂 有紀 著 実業之日本社【廃遊園地の殺人】感想・レビュー

廃遊園地の殺人【あらすじ】

旧天衝村に建てられた、テーマパーク『イリュジオンランド』

華々しいオープンを待つばかりだった････

ーしかし事件が起きるー

旧天衝村の住民を迎え入れて行われたプレオープン中、村人の一人だった『籤付晴乃(くじつきはるの)』が猟銃を乱射。

四人を殺害、八人に重軽傷を負わせた上で自身も自殺した。

そして、イリュジオンランドはオープン前に閉園となる。

その後、廃墟コレクターの資産家「十嶋庵(としまいおり)」に買い取られ、二十年ぶりにかつての夢の国が解き放たれる。

狭き門をくぐり抜け、廃遊園地に招かれた何か訳ありの招待客。

元イリュジオンランドの経営陣に渉外担当、そしてスタッフ。

廃墟雑誌の編集者に廃墟マニアの小説家とＯＬ。

そして、特質な廃墟マニアのコンビニ店員「眞上永太郎(まがみえいたろう)」もその中の一人だった。

招待客達が集められ、十嶋財団派遣されたスタッフから告げられたのは『このイリュジオンランドは、宝を見つけたものに譲る』という「十嶋庵」からの伝言だった。

それぞれに何か因縁を抱えた招待客達は宝探しをはじめる。

そして翌朝、串刺しになった血まみれの着ぐるみが見つかる････

クローズドサークルとなった廃園、止まらない殺人、見つからない犯人。

探偵不在の中、最後に真実を見つけ出すのは････

失われた夢の国で起こる、廃墟×本格ミステリへようこそ！

廃遊園地の殺人【少しネタバレ感想・レビュー】

自分もそうだが、設定は本格ミステリ好きにはたまらない設定となっている。

何やら全員訳ありの招待客、その中で起きる異質な連続殺人。

実質クローズドサークルとなった(最初は自分達でとどまった)廃遊園地。

招待客に付けられた装置もいい演出の１つとなってる。

宝を放棄して外に出る時に外すか、死亡した時に解る装置。

これによって、死体が発見されなくても誰が死んだか解る。

ただ探偵がいない！

素人が犯人を探すミステリはよくあるが、「本格ミステリと言ったら探偵がいないと」などと思いながら読み進めると、なんだか違和感を感じる。

登場人物の全員の言葉が嘘っぽく読み取れる。

つまり全員が信用出来なくて、犯人に見えてしまう。

実際、招待客全員がイリュジオンランドが欲しく宝を探してる訳ではなく、それぞれが違う目的の為参加していた。

その目的を、本作の探偵役、主人公で語り手の「眞上」がコンビニ店員仕込み？の洞察力で言い当てて行き、犯人が絞られていく。

作中で眞上は「コンビニ店員をしてると〇〇なんですよ」とたびたび出てくる。

いやいや、それコンビニで身につくスキルじゃないよと、ツッコミを入れたくなる。

そして、彼自身もまた秘密を抱えていた････

これ以上犠牲者を出さないように、自ら名探偵と名乗り出て、本格ミステリの様な解決編と題してみんなを集める眞上。

この「廃遊園地の殺人」真実は、20年前の「銃乱射事件の真実」とも関わっていた。

この２つの事件で解った犯人の思い････

誰かを守る為の行動は復讐へと変わり、20年間機会を待っていた。

真実が明るみになり、復讐が成し遂げられたとしても、廃遊園地はこの先何十年もそこにあり続ける････

なんだかスッキリしないモヤモヤした解決編でした。

不可解な殺人の本作ミステリと、ややこしい登場人物達に混乱してしまいそうな作品。

そして「眞上永太郎」で続編があってもおかしくない終わり方。

大変面白かったです。

斜線堂 有紀

斜線堂さんの作品は、本作で3作目。

2020年ミステリランキングで続々とランクインした「楽園とは探偵の不在なり」と、代表作とも言える「恋に至る病」を読了。

「楽園とは探偵の不在なり」は特殊設定ミステリ

天使と呼ばれている生物が浮遊している世界。

その世界では、2人以上人を殺すとその天使達に地獄に引き摺り込まれる世界だった。

しかし、ある孤島の館で起こるはずのない連続殺人が発生する。

こちらは特殊設定ミステリと本格ミステリの融合で大変面白かった。

「恋に至る病」は本作ミステリとは違い、かなりの衝撃的なミステリ

高校生の暴走する愛と連鎖する悲劇が描かれている。

こちらは、短いあらすじなしの、書評がありますのでそちらを見てください。

その他にも、多彩なミステリを書かれている斜線堂有紀さん。

これかも追って行きたいと思う。

恋に至る病の感想・レビューはこちらをご覧ください！

廃遊園地の殺人【みんなのつぶやき・感想】

にほんブログ村

【30日間無料】でお得に本を読む方法知ってますか？