綾崎 隼 著 ポプラ社【死にたがりの君に贈る物語】感想・レビュー【殺人のないミステリ】

死にたがりの君に贈る物語【あらすじ】

『家族による代筆で、訃報を申し上げます。ミマサカリオリは二十六日の未明に、心不全で息を引き取りました。これまで応援して下さった皆様に、心より感謝致します。本当にありがとうございました。』

人気小説家からのSNSの投稿はわずか1時間でトレンドを独占した。

デビュー作『Swallowtale Waltz(スワローテイル　ワルツ)』はシリーズわずか5冊で、累計発行部数４００万部を超えるヒット作品。

全国に熱狂的なファンを持つ、全てが謎に包まれた小説家「ミマサカリオリ」だが、シリーズ完結を目前で厳しい批判を受ける事となり、そして訃報が拡散する････

訃報が告げられた2日後、16歳の少女「中里純恋」は後追い自殺をしてしまう。

運良く未遂に終わった純恋が言った言葉が「完結編が読めないなら生きていても意味がない」と語った。

やがて、『Swallowtale Waltz』のファンサイトで集められた男女７人が、小説になぞり、電気も何もない、山の中にある廃校で共同生活をする事によって、未完となった結末を探そうとしていた。

その中には純恋も参加していた。

だが、そこでは絶対起こるはずのない事件が起きる事となる････

著者が、自身に、そして読者に問い掛ける、衝撃の感動ミステリ！

死にたがりの君に贈る物語【感想・レビュー】

綾崎隼

綾崎隼さんは初読の作家さん。

と言うか、代表作も知らなければ、名前さえ初めましてだった。

本屋で平積みされていた、綺麗で好きな装丁の本だったので手に取り、評価もかなり良かったので、ほぼ衝動的に読み始めた一冊。

実際、かなり面白かった。

このタイミングで、こんなに素晴らしい作品に出会えた事に感謝。

そして、改めて装丁って大事だなと思った。

自分のように綾崎さんを知らない方にも是非、読んで欲しい作品。

あと、綾崎さんの作品は本作で40作目という事にもビックリ！

絶妙な構成

小説の中に出てくる、小説の物語になぞって廃校で共同生活を始めると言う、現実ならすぐに警察沙汰になってもおかしくない、特殊設定に近い話。

その中でヒロイン的な存在なのが「中里純恋」

話は主人公の「広瀬優也」の目線で語り手となり、進んで行く。

ヒロインの純恋は、共同生活のパートになると、普段は閉鎖的な空気感を出している16歳の少女と、参加者の7人の中の1人になる。

ここで、純恋の存在を薄くする事が絶妙だった。

後半のどんでん返しにも効いていて、一気に読み進める事になり、自分もまんまと騙されてしまった。

実際読む時は、あまり考えないで素直に読み進めて欲しいし、自分のように、Amazon等のあらすじも、見ないで読み始める事をおすすめします。

感動のラスト

赤の他人同士が、生活しにくい環境の中での共同生活はうまく行くはずもない。

ある出来事をきっかけに、何かを悟ったかのように1人づつ参加者が減って行く。

そして主人公の広瀬までもいなくなった時、衝撃の感動的な展開が始まる。

ネタバレになるので多く書けないが、現実でもごく僅かな人達による批判を受けて、活動を中止したり、自殺に追い込まれた有名人、著名人が思い当たる。

その批判ををしてる人の、何倍ものファンの人達の愛があるからこそ、芸能界やファンあっての世界は、成り立っているんだと個人的には思っている。

この作者の思いが詰まった感動的なラスト。

恋愛とは違った愛の形を、実際読んで、感じて欲しい作品。

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